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Jun 24, 2025

ポピーインタビュー VOL.11 西村恵美子氏

健康志向の高まりや高齢化の進行を背景に、「食」を通じて人々の健康を支える栄養士への関心が高まっています。そんな中、昨秋から今春にかけて放送されたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』では、平成元年生まれのヒロインが、ギャル魂を胸に「栄養士」としてパワフルに突き進む姿が描かれました。作品の中では日本栄養士会会長の中村丁次氏による栄養学の考証のもと、高齢者のフレイル、災害時の炊き出し、スポーツと栄養など、さまざまな側面から「食」の大切さが描かれ、「栄養士」の世界に更に注目が集まりました。そこで、今回のポピーインタビューは、長年、管理栄養士として活躍され、現在、山形県栄養士会の顧問である西村恵美子さんにお話を伺いました。

ポピー)現在、山形県栄養士会で取り組まれていることについて教えてください。

現在、特に力を入れているのが、在宅療養中の方への栄養支援です。前年度から山形県栄養士会として、在宅療養者のご自宅に管理栄養士が訪問し、栄養指導を行う取り組みが始まりました。この事業を進めるために、介護支援専門員等の多職種と連携を取りながら、医師の指示のもと、血液データを確認しながら支援を行ったり、嚥下の状態を確認するために嚥下内視鏡検査に同行することもあります。現在では、年10回以上の依頼が入るようになりました。今後は若い世代の育成に加え、退職後の経験豊かな栄養士の力も借りながら、人員体制をより充実させたいと考えています。

ポピー)栄養士を目指されたきっかけは?

栄養士を目指したきっかけは、高校時代の部活動でした。バレーボール部のマネージャーを務め、合宿では約30人分の朝食から夕食を作る日々でした。献立を考え買い出しをし、皆に「ちゃんと食べなさいよ」と声をかけるうちに、「こういう仕事があるのではないか」と思うようになりました。さらに、地域の公民館で活動していた山形市の栄養士さんからも影響を受けました。

ポピー)仕事の経験を積みながら管理栄養士の資格を取得されたそうですね・・・

県外の短大卒業前に、父の勧めで山形市職員の採用試験を受け、栄養士として市に就職しました。一番初めに配属されたのは当時の健康課で、その後、学校給食、児童福祉課(保育園)、市立病院済生館、老人施設など、幅広い分野で経験を積みました。特に済生館では、糖尿病専門医と連携し、患者一人ひとりに寄り添った新たな栄養指導の形を実践しました。血液検査の結果に改善が見られるのが非常に興味深く、延べ3,000人ほどに対応したと思います。管理栄養士については、国家資格制度の創設情報を数年前から得ており、30歳で3人目の子どもを出産した年に、翌年の第1回目の国家試験での一発合格を目指しました。ねじり鉢巻きで、人生で一番勉強した時期でした。東京の合同勉強会には夫と2人の子どもを連れて参加し、家族の協力が大きな支えとなりました。そして第1回目の試験で無事に合格という結果をいただくことができました。今も仕事を続けているのは、やはりこの仕事が好きだからだと思います。若い世代にはやりがいを伝えることを心がけています。

ポピー)子育てしながらの試験勉強で一発合格というのは、本当にすごいですね。また、医療や介護、教育機関など、非常に広い分野で経験を積まれた中で、病院で関わられた人数に驚きました。思い出深い患者さんとの関わりはございますか?

病院勤務時代、20代後半の若さで糖尿病の合併症により視力を失いかけていた男性患者さんがいました。生活も荒れ、自暴自棄になっていた彼に、おにぎりを手に持ってもらいながら食事指導を行い、「このままではだめ」と厳しく声をかけたこともありました。異動後も彼はお母さんと何度も職場に訪ねてきてくれました。その後、彼はマッサージ師を目指して自立への一歩を踏み出しました。数年後、六魂祭で市職員として会場誘導をしていたとき、「西村さん!」と言う声に振り向くと、白杖を持った彼の姿が。お母さんも一緒で、3人で再会を喜び合いました。声だけで私だとわかったそうで、本当に嬉しかったです。拒食症の高校生やインスリンが必要な小学生など、命にかかわる症状と向き合う子どもたちにも、時に周囲からやりすぎだと言われるほど関わってしまいましたが、そうせずにはおれませんでした。もしそれが彼らの人生の何らかのきっかけになるなら、それが一番の喜びです。

ポピー)在宅支援の現場から見える課題について教えてください

在宅での栄養支援には、まだ多くの課題があります。栄養状態の悪化は血液検査に表れますが、足のむくみなどは栄養と無関係と誤解されることも少なくありません。特に、脱水や低栄養の早期発見は難しく、気づかれにくいのが現状です。こうした課題に対応するため、製薬会社の協力を得て勉強会を開催したり、会員や多職種の方に向けた栄養の基礎講座の実施も検討しています。

ポピー)今後の公私の展望について教えてください 

公的な面では、山形県栄養士会の活動に現役としてできるだけ長く携わり、後進の育成を続けたいと思っています。栄養士が県民の皆さんに寄り添い、「食べることは生きること」という信念のもと、明るい未来に繋げていきたいです。活動の一環として山形市のスクスクメニューの監修や、減塩を意識した弁当の監修にも取り組んでいます。

私的な面では、90歳になる母が脳梗塞で入院中です。父を介護し自宅で看取った経験もあるので、母にもできるだけ穏やかに過ごしてもらえるよう努めたいと思います。孫の送り迎えといった“ばあば”の役割も、私のリフレッシュの時間です。地域のコミュニティセンターから調理講習会や離乳食講座の依頼もあり、可能な限り引き受けています。これからも地域のためにできることを続けていきたいです。そのためにも、まずは自分自身の健康を大切にし、元気に歩ける身体を維持していきたいと思っています。

インタビューを終えて>  

「食べることは、生きること」–西村さんのまっすぐで熱い想いに触れ、私たちも食や健康との関わりを改めて見つめ直す機会となりました。地域に根ざし、世代を超えて「栄養」の観点から人の心に寄り添い続ける「管理栄養士」という仕事。これからの社会に、ますます必要とされる存在であることを改めて実感しました。

山形県栄養士会の事務所にて
過去のポピーインタビューはこちらからご覧いただけます。

Vol.1 根本元医師(在宅医療・介護連携室ポピー室長・根本クリニック院長)
Vol.2 峯田幸悦氏(元ながまち荘施設長・現山形県地域包括支援センター等協議会理事長)
Vol.3  大島扶美医師(医療法人社団・社会福祉法人悠愛会理事長)
Vol.4 山川淳司氏(元小規模特別養護老人ホーム大曽根施設長/現盲特別養護老人ホーム和合荘)
Vol.5 髙橋邦之医師(髙橋胃腸科内科医院 古舘診療所・飯塚診療所所長) 
VOl.6 神谷浩平医師( MY wells 地域ケア工房代表 )
Vol.7 大沼智之歯科医師(大沼歯科医院 院長) 
Vol.8 志田信也氏(医療法人社団楽聖会 介護事業統括責任者)   
Vol.9 後藤和樹氏(社会医療法人二本松会 山形さくら町病院 医療福祉相談室長)
Vol.10 佐伯和毅氏(緑町Kokoro薬局 代表取締役 薬剤師)
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Nov 12, 2024

在宅療養展示カフェ「ふらっとカフェ in 山形市役所」を開催いたしました

10月28日(月)~31日(木)山形市役所1階エントランスホールで「医療や介護が必要になっても家で暮らせるの?在宅療養を知ろう!ふらっとカフェin山形市役所」を開催いたしました。

この催しは住民の皆様に在宅療養に関する知識や資源などの情報発信と体験を通し『在宅療養という選択肢もある』ことを知っていただく目的で開催したもので、ポピー開設以来初めての試みです。思いつきから始まり「展示したい」「体験コーナーも設けたい」「カフェやりたい」「クイズ大会やりたい」「ハロウィンのくじ引きもしよう」等の様々な欲望を集めた結果、多くの関係機関の皆様にもご協力をいただきながら開催する運びとなり、大盛況な4日間となりました。

10月下旬、既に冷たい風を感じるようになっておりましたので温かいコーヒーや麦茶などを提供。ご案内などもさせていただき、 4日間で延べ146人 の方にご覧いただきました。LINEの告知を見て情報を集めることを目的に足を運んでくださった方、病院の面会帰りの方、申請や手続きにいらっしゃったりバス待ちの間に気になってのぞいてみた方等、様々な方がお立ち寄りくださいました。高齢者だけではなく若い世代の方々が「家族のために今のうちからどのように準備をしていくといいか」という方もいらっしゃいました。

ポピーでは「家で暮らすという選択肢」について住民の皆様に知っていただくための催しを次年度も継続して開催していきたいと思います。

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Oct 16, 2024

「人生会議」の普及に向けて ~地域包括支援センターふれあいの取り組みのご紹介~

 最期まで自分らしく生きるために、人生の最終段階で自らが希望する医療やケア、大切にしていること、望んでいることなどを、元気なうちから前もって考え周囲の信頼する人たちと話し合い、共有する取り組み「人生会議(ACP:アドバンスケアプランニング)」。

 山形市では各地域包括支援センターを中心に、この人生会議の市民への普及啓発に取り組んでいます。この度、「地域包括支援センターふれあい」が、地域の皆さんに分かりやすく楽しみながら人生会議を知っていただくことを目的に「ふれあい人生すごろく」を作成、8月5日にサロンで地域の方々に体験していただくという事でお伺いしました。

ふれあい人生すごろくを楽しむみなさん

地域包括支援センターふれあい、工藤センター長は、「人生会議の普及のためのツールとして、今後も改良を重ねていきたい」と話しておられました。市民の皆さんが気軽に取り組める人生会議のツールとして、今後の発展を期待しております。

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Sep 17, 2024

医療と介護の連携推進のための交流会を開催しました

9月4日(水)19時より、令和6年度 医療と介護の連携推進のための交流会を山形国際ホテルで開催しました。 この交流会は医療と介護の連携推進を目的に毎年8月から9月に行われており、医療や介護に携わる皆様ならどなたでもご参加いただけます。 今年は109名の方にご参加いただきました。

今年の開催テーマは「昭和の小学生」。 初めて会っても年齢が違っても目的が同じなら夢中で日が暮れるまで遊んだことを思い出し、少年少女にタイムスリップしてみたら….と思いながら企画しました。

射的コーナーでは童心に帰りながら景品を狙っていただきました。

山形市長寿支援課プロデュースのテーブル対抗ゲームは「チーム対抗でピカチュウを描いてみよう」というもの。初めて顔を合わせることも多いながらも、グループごとにみんなで力を合わせる姿が印象的でした。優勝チームにはポピー室長より「連携はばっちりで賞」を進呈させていただきました。

昭和の小学生が夢中で見た伝説番組「8時だよ全員集合」に倣い、 医師会理事と山形市の長寿支援課課長がドリフターズに変身!!「8時過ぎだけど全員集合!!」で「医師会長&ポピー室長」のダブル長さんを中心にドリフの早口言葉やじゃんけん大会を行いました。加藤茶(朝田先生)のアドリブや志村(高橋先生)のカラスの歌も盛り上がりました。

中締めの前には参加者全員で記念撮影をしました。連携交流会の集合写真も今年で5回目、開催する度に思い出や歴史を感じる会になってきております。

毎回、中締めは朝田先生と一緒に参加者の皆様にもご唱和いただき「花笠音頭からの花笠締め」です。毎年、連携交流会の見どころの一つです。

理事の先生方も多職種の皆様と職種の垣根を超えて共に楽しみながら連携を深めることができる会にしたいと毎年張り切って準備しております。医療や介護に関わる皆様、 来たことがある方もそうでない方も、来年のご参加を是非お待ちいたしております。(U.K)

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