ポピーインタビュー Vol.12 小野寺眞智子 氏
介護老人保健施設は、医療・リハビリテーション・介護の機能をあわせ持つ施設で、利用される方の心身の機能の維持・回復を図り、再び自宅で生活できるよう支援する、介護保険制度に基づくサービスです。この度は、介護老人保健施設フローラさいせいで支援相談員をされている小野寺眞智子さんよりお話を伺いました。
ポピー)介護老人保健施設の特徴について教えてください。
介護老人保健施設(以下、老健)は市内に5か所しかなく、市民の皆さんにとってはまだ馴染みが少ない施設かもしれません。そのため、どのような役割を担っているのか十分に知られていないと感じています。老健は、医師をはじめ、看護師、介護職、リハビリ職、栄養士、相談員などさまざまな専門職が在籍し、多職種が連携しながら心身両面のケアを提供しています。他の介護施設とは異なり医師が常時配置されており、医療的な視点を取り入れながら生活支援ができることも特徴で、医療と介護の両面からご本人を支えることができます。一方で、こうした老健の役割は、専門職の方々の間でも十分に理解されているとは言えない部分があります。今後は老健の特徴や役割について、地域の皆さんにもより広く知っていただきたいと考えています。
ポピー)「介護老人保健施設フローラさいせい」の特徴を教えてください。
当施設の特徴はいくつかありますが、まず大きな柱となっているのが多職種によるチームケアです。入所されているすべての方に対して週1回の回診を必ず行っており、医師、看護師、リハビリ職、介護職、管理栄養士、支援相談員、事務職など多職種が参加して、ご本人の状態を一緒に確認します。日常的なカンファレンスにも医師が参加し、状態の確認や処方の検討を行うなど、チーム全体でご本人を支える体制を整えています。
特に力を入れているのがリハビリテーションです。入所と同時にリハビリ職と相談員が自宅を訪問し、生活環境や自宅で生活する上での課題、ご家族の考えなどを確認します。その上で「自宅に戻るために必要なこと」を具体的な目標として設定し、リハビリにつなげています。例えば、「自宅で生活するためにはトイレまで15メートル歩けるようになる」といった具体的な目標を立てることで、利用者の意欲につなげています。入所後最初の3か月は、週6回の集中的なリハビリが可能で、この期間の取り組みが大きな成果につながります。その結果、令和6年度の退所先は自宅が46%、在宅系施設が11%で、在宅復帰率は約60%となりました。当施設は「超強化型老健」ですが、その中でも高い水準となっています。
また、身体機能だけでなく認知機能のリハビリにも力を入れているのが特徴です。当施設は市内で唯一、認知症リハビリに取り組んでいます。医師は非薬物療法を重視しており、リハビリ職が週3回、学習療法を実施しています。公文(KUMON)と提携し、高齢者向け教材を使用して行っており、長谷川式認知機能検査の点数が向上する方も多く見られます。こうした身体と認知の両面からのアプローチが、高い在宅復帰率につながっていると考えています。
医療面での特徴としては、褥瘡(床ずれ)ケアに強みがあることも挙げられます。併設の済生病院のWOCナース(ウォークナース/皮膚・排泄ケア認定看護師)から研修を受けており、褥瘡処置に対応できる体制を整えています。そのほか、嚥下(飲み込み)の評価にも力を入れています。嚥下内視鏡検査(VE)を隔月で実施し、その結果をもとに食事形態を見直すことで、安全に食べる力を高め、在宅復帰につなげています。こうした取り組みの結果、当施設から誤嚥性肺炎で入院する方はほとんどいません。また、職員の食事介助の技術や観察力の向上にもつながっています。このように、入院が必要になる前の段階で、ケア・栄養・姿勢などさまざまな面からアプローチできることが、老健ならではの強みだと考えています。
さらに近年は、看取りへの対応も増えています。老健には在宅復帰を支援する役割のほか、在宅や病院での対応が難しい方の終末期を支える役割もあります。老健の中には看取りを行っていない施設もありますが、当施設では希望される方の受け入れを行っています。

ポピー)小野寺さんのお仕事について教えてください。
入所を希望される方やそのご家族からの相談に応じ、状況に合わせた支援につなげています。入所の段階では「これからどのような医療を望むのか」を一緒に考える機会を設けますが、これは、ACP(人生会議)について考えるきっかけにもなっています。入所後は、ご本人の心身の状態やこれまでの生活歴を把握し、医師や看護師など医療スタッフと連携しながら、個別のケアプランを作成します。また、退所後の生活に関する相談にも対応し、退所後の在宅生活ができるだけスムーズに送れるよう、必要な支援の調整を行います。日々の業務では、医師や看護師、リハビリスタッフなど多職種と連携しながら、ご本人にとって最適なケアが提供できるよう調整役を担っています。医療者と利用者・ご家族の間に立ち、それぞれの思いを伝える“橋渡し役”になることも、大切な役割だと感じています。

を大切にしています。
ポピー)老健が地域で求められることは?
これから地域でより求められていくのは、医療依存度の高い方への対応だと感じています。老健は、入院するほどではないものの、医療や生活面での支援が必要な方の受け皿としての役割も担っています。例えば、吸引や経鼻経管栄養などの医療的ケアが必要な方は、受け入れ先がまだ限られているのが現状です。そうした方々が安心して利用できる場所として、今後は老健がその受け皿の一つになっていくことが求められているのではないかと考えています。
ポピー)課題と今後に向けた取り組みについて教えてください。
現在、大きな課題となっているのは人材不足です。福祉分野の教育機関などで学ぶ学生自体が減少しており、業界全体で人材確保が難しくなっています。そのため、若い職員が安心して働き、成長していけるような環境づくりがこれまで以上に重要だと感じています。また、老健の役割については、専門職の方々や地域の市民の皆さんに十分に理解されているとはまだ言えない部分もあります。施設の理念である「慈愛の心で地域の介護、福祉に貢献する」を大切にしながら、地域に根差した施設として、積極的に情報発信を行い、地域とのつながりをさらに深めて、地域で長く生活していくための資源の一つとして老健を活用していただきたいと思っております。
ポピー)最後に、プライベートについて教えてください。
子育ても一段落し、最近は自分の健康管理にも力を入れています。スポーツジムに通ったり、職場の仲間と海釣りや登山を楽しんだりしています。これからも新しいことに挑戦しながら、仕事にもプライベートにも前向きに取り組んでいきたいと思っています。

<インタビューを終えて>
取材を通して、利用されている方一人一人の生活や想いに寄り添いながら、多職種がそれぞれの専門性を活かし連携していくことの大切さと、地域資源としての老健の役割について理解を深めることができました。地域で安心して暮らし続けるための身近な社会資源として、これからも多くの方々に関心を持っていただきたいと感じました。
過去のポピーインタビューはこちらからご覧いただけます。 Vol.1 根本元医師(在宅医療・介護連携室ポピー室長・根本クリニック院長) Vol.2 峯田幸悦氏(元ながまち荘施設長・現山形県地域包括支援センター等協議会理事長) Vol.3 大島扶美医師(医療法人社団・社会福祉法人悠愛会理事長) Vol.4 山川淳司氏(元小規模特別養護老人ホーム大曽根施設長/現盲特別養護老人ホーム和合荘) Vol.5 髙橋邦之医師(髙橋胃腸科内科医院 古舘診療所・飯塚診療所所長) VOl.6 神谷浩平医師( MY wells 地域ケア工房代表 ) Vol.7 大沼智之歯科医師(大沼歯科医院 院長) Vol.8 志田信也氏(医療法人社団楽聖会 介護事業統括責任者) Vol.9 後藤和樹氏(社会医療法人二本松会 山形さくら町病院 医療福祉相談室長) Vol.10 佐伯和毅氏(緑町Kokoro薬局 代表取締役 薬剤師) Vol.11 西村恵美子氏(山形県栄養士会 顧問)
